PORSCHE 911
1997年9月フランクフルトショーでコードナンバー996の911が発表されました。前モデルの993に対しエンジンがアルミ合金製で水冷化され、フロントウインド傾斜角が55度から60度に増え空力特性を向上し、ホイールベースが78mm,全幅が30mm大きくなり、捩じり剛性45%,曲げ剛性50%アップにもかかわらず車重は50Kg軽量化している。
排ガス規制をクリヤする為、吸排気効率に優れ細かい制御が可能で良好な燃焼も得られるセンタープラグ4バルブDOHC化するには、エンジン冷却の水冷化が必須であった。
通過騒音規制をクリヤする為、大きな空冷用ファンをなくしエンジン自体をカプセル化することが必要とされた。空冷エンジンの軽さのメリットはフラット6の重心の低さゆえ水冷化しても充分存在意義は失われない。
ポルシェ社はスポーツカーにとってミッドシップが最良のレイアウトということを承知していて、最初のポルシェ356のプロトタイプはミッドシップであったが、実用性と販売上の有利さの現実的な理由から結果としてRRが採用された。
その後、928〜968迄ポスト911の地位を目指して発表された車は全て水冷FR車だったのも、単純にその方がRRより将来性があると判断してのことである。リアエンジンレイアウトにこだわっているのはポルシェ社ではなく、単にユーザーの嗜好によるところが大きい。
911が傑出したスポーツカーとなり得たのは、そのRRレイアウトに理由がある訳ではなく、ポルシェ社のエンジニアリングのたまものである。スポーツカーにとっては軽量ボディが最善と考えられるが、996はスポーツとGTの間の微妙な位置にある。
ボディが拡大されたことによってスポーツカーとしての資質のある部分は失われたかもしれないが、その反面より速く安全快適にというGTとしての資質には更に磨きがかけられたと言える。結論として996は従来の911シリーズの技術革新と社会環境に適応した正常進化モデルであると言うことができる。